和本は掛け軸などと違い、直接人の手で触れることも多く、綴じ糸や裂地・本紙などの損傷、また飲み物などをこぼしたりといった、人為的なダメージが多い表具です。さらに保管・保存方法についても基本的には他の表具と同様ではありますが、特に虫の被害が多く見られます。少々の虫干しでは綴じ部分まで十分に行きわたらず、内部に巣を作られる事もあります。
修復する際には和書の綴じ糸を解いて丁を開き、一つ一つ剥がして製本前の状態に戻していきます。一枚づつ本紙を裏打ちして行きますが、必ずしも全ての本紙を裏打ちする必要があるわけではありません。しかし、一見ダメージの無いように見えても実際は繊維が脆くなっているものも多く、そういた本紙は全て裏打ちをして補強する必要があります。
また、何度か閉じ直した和本の場合、裏打ちの繰り返しなどでサイズが小さくなり文章が閉じ背に隠れてしまっている事があります。その場合は裏打の際に紙を継ぎ足して閉じ背側の幅を広げ、修正して行きます。
お預かりした作品の状態を慎重に確認し、現在の状態を把握します。
綴じ糸を外し、表紙や過去貼を一折一折丁寧に剥がしていきます。
裏打ちを行います。全てのページを修復するのではなく、大抵は最初の2~3ページ、または最後の2~3ページの傷みが酷いので、その部分を裏打ちにより補修します。
全ページを揃え、ずれている部分も含め裁断機に掛けます。
本の内容に合わせ、裂地を貼り、表紙を作ります。
最後に、絹糸(穴糸)で改めて和綴じを行い、完成です。